麦色(きんいろ)の少年
演奏中、音楽家たちは見えない糸で結ばれている。それぞれの想いを音に託し、
最終的には「自分たちが今、生きている」ということを確認し合ってまた去っていく。
僕とROLLYさんの場合もそうだ。
この2年間、それぞれ色んな時間をすごし、色んな空気と出会い、色んな色を見て、
そしてステージの上と下(オケ・ピット)で再会する。
とりたてて歌の練習をしたわけではない。
作曲を一緒に考えたわけでもない。
けれど、僕たちは音楽を奏でるあの瞬間、完全に「見えない」という糸で結ばれてしまう。
それは初演の稽古の最中であった。
僕はROLLYさんから御自身と、亡くなった兄、そして御両親との悲しくはかないストーリーを打ち明けられた。
ROLLYさんには幼くして亡くなった兄がいらしたということだ。詳しい事情は分からないが確か
事故だったはずだ。とにかくその後に生を受けたご本人は、大そう過保護に、たとえばたたみの上で
自転車に乗るようにして育てられた・・・ということだった。
僕にはよく分かる。ROLLYさんの御両親が、どんなにハラハラしながら彼を育てられたことか。
それに応えて、たたみの上のサーカス団のように親に勇気をあたえて来た少年ROLLYのことも
想像に難くない。ミュージカルの中で玉乗りをしながら、唄い、そでに居るスタッフをも笑わせようと努力する
彼の現在の姿とも全くだぶって見える。
二幕では、キツネの頭を付けたROLLYさん「あそこにたしか生きた少年・・・」のことを唄う。
時にポツポツと時にボソボソと・・・。
僕はその瞬間光を観る。金色の少年の、見えない命を観る。
ROLLYさんからその話を打ち明けられた時、とても変な感じがした。
こんな偶然ってあるんだろうか、僕は自分の17年前に亡くした息子のことを打ち明けた。
「僕はあなたの父親と同じです」 と言った。
かくしてキツネの唄は完成した。僕とROLLYさんの中でのミュージカル『星の王子さま』は完結した。
初日の幕が上がり、ステージの上と下でたがいにそれぞれの光を観ることになった。
その瞬間、僕とROLLYさんとは「見えない」という糸で結ばれている。
「目に見えない、がそこに居た」
僕等にとっての『星の王子さま』とは正にそういう話だ。
「王子さま」とは、「かつてここに居た」はずの兄弟や肉親に他ならない。
そしてそれは大勢の、とにかく沢山の先にいってしまった子供たちの代表で、
そんな王子さまが沢山の観客の前でキツネや指揮者に会いに来る話だと、僕は勝手にそう思いこんでいる。
(出展:2005年8月「星の王子さま」プログラム)