その1


「ただいま掛川駅を通過・・・・・」
林を切り開いたようなこの辺に、点在する大工場。
つぎつぎと車窓に映し出される。
シセイドウ・・・ポカリスエット・・・ポーラ・・・。
そして工場の周り一帯、建てられたばかりの住宅。
りっぱな新興住宅地だ。

さっきの工場にこの家から通うのだ。
確かに工場のもつ大駐車場には、満杯の軽自動車が停められていたもの。
もし僕が、何かのご縁でこの土地に移り住んだら、
やっぱりまず工場に行ってみたい。
中はどうなっているのか、食堂はどんなか、
何か面白いものはないか見てみたい。
しかしそこには役に立つ人間しか入れまい。
僕は工場にいて、何かの役に立つのだろうか。
やっぱり憩いの場でピアノを弾く位しかできないか。
そういえばたった今、「ヤマハ音楽教室」の看板が目に入ったぞ。
そうなるとここら一帯の音楽の先生か・・・。
僕に先生が務まるだろうか。
少なくとも工場勤めよりは役に立てそうだ。

どちらにせよ毎日はどんなだろうか。
単調なんだろうか。息抜きには何をしよう・・・。
憩いの場は、とりあえずあの大きなパチンコ屋だろうか・・・。
家もとりあえず広そうだ。庭もある、山もある。
僕はそこで、どんな曲を書くんだろうか。
沼もある、坂道もある、林も深そうだ。
どんな曲を書くんだろうか。そもそも曲を書くんだろうか。

どんな生活どんな私どんな僕
・・・まどろむうちに、名古屋に着いた。